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雪氷冷熱の利活用技術

天然の雪や氷は、古くは紀元前から世界中で冷熱資源として活用されてきました。日本でも、氷室や雪室と呼んで、天然の氷や雪を藁などで断熱した穴の中で貯蔵し、高貴な方への献上品とされたり、病人の熱さましなどに使われてきました。

1960年代に一度は廃れてしまった天然の雪氷利用ですが、19988年以降に近代的技術をまとって復活し、今では全国各地に100以上の施設が稼働しています。

これまでの研究の概要

  • 1960年代に露天での雪保存の文化は消滅してしまいました。しかし1988年に十日町市と湯之谷村(現魚沼市)で近代的技術をまとって復活します。どちらも仕掛け人は民間人でした。
  • その後、雪を利用した冷房冷蔵の本格的な学術研究や、先導的なパイロット事業が全国に展開されるようになります。雪国の自治体が総力あげて国に要望したこともあり、2002年には雪氷冷熱新エネルギーに追加されるに至りました。
  • 私たちの研究室では、雪山の表面に被せる被覆材として、古くからその断熱効果が知られてたもみ殻について、実験と理論的検討によって断熱性能の高さの理由を解き明かしまた。簡単にいうと、もみ殻の撥水性保水性という水に関わる性質が大きく影響していたのです。
  • 次に、雪冷房を広く普及させることを目指して取組んだ研究は、住宅に30トンの雪室をビルトインして、貯蔵した雪の冷熱だけで住宅の夏の冷房をまかなおうというものでした。
  • 高床式住宅の一階の雪室に雪を入れて夏まで保存し、冷房したところ、ひと夏で1,000円ほどの電気代で済ました。さらに、冷房だけでなく、除湿や空気清浄の効果も高く、実に気持ちの良い冷房だということも実証されました。
  • 次に取り組んだのは、シイタケ栽培温室の雪冷房の分析です。南魚沼市八色で通年シイタケ栽培に取り組む農家の悩みの種は、夏の冷房と冬の暖房費でした。
  • 田んぼに1000トンの雪山を造り、もみ殻をかけます。夏には融雪水を汲んでハウス内の熱交換送風機に通して冷房していました。実験と分析の結果、市販のエアコンのエネルギー効率(COP)3に対して、雪冷房では14にも達していました。
  • 雪冷房は初期投資が高く回収に年数がかかると言われていますが、この例では様々な工夫によって初年度から電気冷房よりも割安となることが示されたのです。

現在取り組んでいる研究課題

  • 現在、雪室倉庫内に保管した農産物の加工プロセスも、雪室内で行う研究に取り組んでいます。これによって加工時の鮮度劣化を抑え、出荷までの工程を簡略化して、さらなる品質向上とコスト削減を目指しています。
  • また、イベント等における屋外での雪冷房の需要(テント内の冷房など)の高まりを受け、雪山からテントまでの雪のハンドリングの工程を簡略化し、必要な時間稼働し続けるモバイルクーラーの試作にも取り組んでいます。

この研究課題に関連する論文など

著者 論文名 雑誌・巻号・ページ 発行年
上村靖司,加藤涼,上浦圭太 氷利用冷房における空調性能評価 空気調和・衛生工学会論文集, 201, 11-18
J-Stage
2013
上村靖司,永井宏幸,宝地戸謙介,伊藤親臣 雪室をビルトインした住宅における空気循環冷房の性能 空気調和・衛生工学会論文集, 163, 19-27
J-Stage
2010
上村靖司,庄山武志,星野真吾 貯雪用断熱被覆材としての籾殻の伝熱過程 第1報:露天雪保存実験および物性測定 雪氷, 70(1), 15-22
Seppyo
2008
上村靖司,坂下明子,星野真吾 貯雪用断熱被覆材としての籾殻の伝熱過程 第2報:内部熱伝導および表面熱収支モデル構築の試み 雪氷, 70(2), 97-103
Seppyo
2008
上村靖司,戸井田隆行 雪冷熱を用いる原子力発電施設の出力制御システムの概念 雪氷, 65(2), 127-134
J-Stage
2003

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