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Column アンカー問題(その3)

こんなアンカーが欲しい!
①十分な強度があって、②雪の中でも見つけやすく、③命綱が結びつけやすく、④そして現実的なコストであること、この4条件を満たすアンカーを考えてきました。
魚沼市建築組合との出会い
2012年に同じ問題意識を持っていた魚沼市建築組合との出会いがあり、2013年から始めた「雪下ろし安全研究会」で議論を深め、各地に試験的なアンカー設備を設置しました。代表的なものを紹介します。

腕金ワイヤー式
瓦屋根には穴をあけにくいですよね。そこで棟側の母屋(垂木を支える梁です)にL字型の金物(腕金)をはめこみ、腕の先を屋根上に出します。反対側も同じように腕金を取り付け、その間にワイヤを渡す方式です。

ナデ止め単管式
瓦棒葺きの屋根用の金具です。ナデ止めといって、雪が滑り落ちるのを防ぐ金具が、新潟県ではどの屋根にもついています。数百円程度のナデ止め用金具を活かして単管が取り付けられるように工夫したものです。

屋根馬単管式
ナデ止め用金具を活かし屋根上に馬を組んでいます。この例では単管を渡していますが、強度さえあればワイヤーや管材でも大丈夫でしょう。十分な高さがあるので雪が積もっても埋まらずに見えます。

ざっくりと大別すると、
・建物への固定: 腕金、ナデ止め、屋根馬
・横断する部材: 管材(単管、ガス管)、アングル、ワイヤなど
ということになるでしょうか。屋根馬をいくつか並べる方式もありますね。
高さはどれぐらいが良い?
棟近くにナデ止めをもう一列設置するだけでも十分アンカーになります。ただし低すぎてロープがかけにくいので、少し立ち上げた方が使い勝手が良いです。
 1mを超える雪が積もっても見えるようにするには、1.5mぐらいの高さが欲しくなってしまうのですが、意匠的によろしくない気がします(立ち上げるほど強度確保のため設備も大掛かりになりますし)。
 個人的には、雪に埋まっても良いので跨げる高さ(30㎝ぐらい)で作れば悪目立ちせず良いと思います。棟付近にある、とわかっていれば、掘り出すのはそれほど大変ではないですし。
新潟県もついに動いた!
2017年、新潟県がついにアンカーの工法やコストなどを取りまとめた ガイドブックを発行しました(2019年に第2版発行)。これを見ると、どんな工事をすればよいのか、いくらぐらいかかるのか、どのように活用すればよいのか、がわかりやすく書かれています。中身はもちろん魚沼市建築組合のメンバーの皆様の努力の結晶です。第2版からは雪かき道場®も監修に加えられました。

補助金制度ないかしら・・・
ガイドブックを見ると、やはり10万円以上かかってしまいます。「冬しか使わない、もっと言えば長岡ぐらいの雪の量の場所だと、何年かに一回しか使わない、そんなものにそんなにお金をかけられない」と言われれば、その通りですよね。
アンカー補助金できました!
そうなるだろうな、ということで、魚沼市にお願いしたところ、平成26年度からリフォーム補助金に、アンカー設置補助のメニューを追加してくださいました。
 上限5万円の2分の1補助。これなら10万円のアンカーが5万円の自己負担で設置できます。平成30年までの5年間で35件の活用があったそうです。

広がってます!
 そうこうしていたら、長野県でも平成31年度から、上限8万円、2分の1補助の制度を創ってくださいました。こういう補助制度がもっと拡がっていったらいいなぁ。
 さらに、調べてたら、秋田県では、 アンカー設置を頼める事業者の情報
も発信していました。
そしてもっと安くて安心して使える安全なアンカーが開発されていったら良いですね。

その4へつづく・・・

このサイトは、長岡技術科学大学雪氷工学研究室のサイトです。