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Column アンカー問題(その1)

命綱をつけましょう!
雪下ろし中の転落事故が後を絶ちません。それどころか、雪の量の割に事故の件数は増えているようにさえ見えます。行政機関も、事故の多さを憂いて、積極的に啓蒙活動をしています。どれを見ても、必ず「命綱をつけましょう!」と書かれています。
内閣府   国土交通省  新潟県  山形県  秋田県  青森県  北海道警

命綱をつけましょう・・・どこに?
「命綱」と呼んでいるものはロープのことです。体に装着する安全具は「安全帯」とか「ハーネス」といいます。もちろんこの2つは必須アイテムですが、もう一つ肝心なものを忘れています。
「アンカー」です。体に安全帯を装着し、それにロープを結んでも、その先はどこへ結ぶの?という肝心かなめの問題がなおざりになっているのです。
アンカーって屋根の上についてる?
ところで屋根の上に、ロープが結べそうな場所、思い当たりますか?落ちないようするするためのものですから、①頑丈で、②屋根のてっぺん(棟(むね)といいます)の近くにあり、③ロープが結べるもの、でないといけません。無いですよね。テレビのアンテナの足とか、ダメですよ。すぐ壊れます。

で、結局どこに結ぶ?
結論。ありません。上の啓蒙頁を見ると、「屋根の反対側の家の柱や立ち木に結ぶ」と書いてあるものもありますが、これって、

  • 屋根の上に、長~いロープと除雪具を持って上がる。
  • 屋根の上をある程度掘り進んで、反対側の屋根の方まで行く。
  • ロープを吊り下して、いったん屋根から降りる。
  • 吊り下がっているロープを、柱か立ち木に結ぶ。
  • もう一度屋根に上がって、ロープを安全帯につなぐ。
  • 雪下ろし作業を開始する。
  • 片面が終わったら、反対側の屋根で上の作業を繰り返す。

となりますよね。こんなことをやっている間に雪下ろし作業、終わってしまいますよね。いや、安全確保していないうちにこれだけの作業をしなければならないとなると、準備のうちに事故に遭ってしまいかねません。

差込口の無いシートベルト
「○○をつけましょう」
そう言えば、車のシートベルトも同じですね。「アンカーが無い」というのは、シートベルトでいえば「さあつけようと思ったのに、差込口が見当たらない」というのと同じ状況なのです。
さて、どうしたらよいか。

その2へつづく・・・

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