融雪装置の熱設計と制御

道路の積雪を放置すれば通れなくなりますので、「どかす」か「とかす」ことで除去しなくてはなりません。
どかす方法は道路わきに寄せるだけなので邪魔になりますが、融かす方法なら消えて流れてしまうので簡単です。しかし膨大な熱量を消費します。
変動する降雪量に対して、無駄なく効果的に融かすために必要な熱量の設計方法と、融雪装置の制御方法について研究しています。

路面の熱・物質収支モデルから、実際の気象データを入力として融雪シミュレーションを行うことで、融雪装置に求めれれる融雪能力を地域ごとに算定できる汎用的な手法を提案しています。

これまでの研究の概要

  • 路面の熱・物質収支モデルを構築し、入手容易な気象データを入力とし、路面積雪量の変化を再現する計算を行いました。
  • 雪を融かすために必要な熱量を融雪負荷といいます。これと融雪装置の融雪能力を比較して能力が上回れば雪を融かし切ることができますが、負荷が上回れば雪は残ってしまいます。
  • 大雪に対応できるだけの能力を与えれば、雪が残ることは無いのでサービスは良いことになります。それでは過剰能力となってコストが膨大なものになってしまいます。
  • 道路を管理する立場(一般には行政)と道路を使う立場(一般にはユーザー)が、サービスとコストの両方を勘案しながら、折り合える条件をさがせれば、満足度はあがるはずです。
  • 地域毎の熱負荷に応じて、融雪装置にどれだけの熱出力を与えたら、どれだけのサービスが提供できるのか、その評価のための線図を作成し活用して頂いています。
  • その他にも、ほんの数㎝の残雪を許容するだけでも、コストは半減するという計算結果も示しています。
  • さらには、雪が降ってきたことをを検知して装置を動作させる場合(降雪制御)と、雪が積もっていることを検知して動作させる場合(積雪制御)で、運転時間が3分の1まで減らせる可能性も示しています・。

現在取り組んでいる研究の概要

  • 現在広く採用されている降雪検知制御を、積雪深制御に変えることで、融雪装置の運転費用が大幅に削減される可能性が示されたことから、実際の融雪装置への実装に取り組んでいます。
  • まずは、安価な積雪深計測方法の開発に取り組みました。汎用のレーザーを積雪深計測に転用し、強い降雪があるときでも、データ処理に工夫をすることで、安定して精度良い積雪深計測を可能にしました。
  • 次に、これを遠赤外ヒーターと組み合わせて、所定の積雪深を超えた時に、超えた分だけを融かす制御を行い、降雪検知制御の場合と比べて、運転時間を約10分の1に減らすことができました。
  • 現在は、道路の散水融雪装置(いわゆる消雪パイプ)にこの制御を適用するべく研究を行っています。

この研究課題に関連する論文など

著者 論文名 雑誌・巻号・ページ 発行年
杉原幸信, 山賀康平, 田中日菜, 上村靖司 汎用レーザー距離計による残雪深計測 日本雪工学会論文集, 40(2), 1-13.
CiNii
2024.1
上村靖司,杉原幸信,代田俊登,町田敬 遠赤外線融雪面の積雪深推計モデルと最適運転条件 雪氷, 83(4), pp385-401.
CiNii
2021.7
上村靖司・善哉広大 路面融雪装置の設計熱負荷 第3報:サービス水準と消費熱の総合評価指標の提案
雪氷, 81(6),269−281.
CiNii
2019
上村靖司・楠田翼・藤野丈志 路面融雪装置の設計熱負荷 第2報:残雪許容が熱負荷に与える効果 雪氷, 71(6),445−454.
CiNii
2009
上村靖司・星野真吾 路面融雪装置の設計熱負荷 ー熱収支モデルの構築と熱負荷線図の作成ー 雪氷, 66(6),677−692.
DOI
2004
上村靖司 経済的な新雪除雪基準の評価 雪氷, 60(1), 25-35.
DOI
1998
上村靖司, 梅村晃由 屋根融雪装置の能力設計に関する提案 日本雪工学会誌, 12(3), 212-217.
DOI
1996

問い合わせ先
雪氷工学工学研究室
〒940-2188 新潟県長岡市上富岡町1603−1
長岡技術科学大学
電話:0258−46−6000(代表)
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